勘と度胸に依存した私の契約審査基準:秘密保持契約書

雑記
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はじめに

前回(↓)に続き、第二弾です。

今回は、この契約書(↓)を上から順に見ながら、気になる条項についてコメントしていく形で進めたいと思います。私が持っているのは第2版ですが。。。

なお、前回同様、私は今まで契約審査のポリシーが明確に定められている会社に勤めたことがなかったので、以下に記載するものは、私が過去に所属していた会社の契約審査ポリシーでない旨、明記させていただきます。隣の机で、先輩は、同期は、後輩は、もっと厳しい修正を入れたり、もっと甘い修正を入れていたりしたのでしょう。

取引のパターン分け

秘密保持契約だと、主に秘密情報を開示する側か、それとも受領する側かによって、大きく方針が異なりますので、具体的な審査基準をメモする前に、取引のパターン分けをしておきたいと思います。

パターン A① A② B C
当社 たいした情報を開示しない 重要な情報を開示する 重要な情報を開示する たいした情報を開示しない
相手方 重要な情報を開示する 重要な情報を開示する たいした情報を開示しない たいした情報を開示しない
  • パターンA:相手側が重要な情報を開示する
  • パターンB:自社のみ重要な情報を開示する
  • パターンC:相手側、自社側、ともに実際のところ大した情報を開示しない

契約審査基準

第1条(秘密情報の定義について)

秘密情報を書面で特定するか否か

  • A①:特定する。情報を受領するから。
  • A②:特定する。情報を受領するから。A②でも、情報を受領する側であること=秘密情報の範囲を特定することを重視。
  • B:特定していなくてもOK。情報を開示する側だから。ただし、運用上は「㊙」とか「CONFIDENTIAL」とかの表示を付すようにする。
  • C:特定する。実際には秘密にすべき情報がないにもかかわらず、広範囲にわたって秘密保持義務が課されるのは嫌だから。本当はそもそも秘密保持契約を締結したくない。

サンプルは書面での特定なしに秘密情報とするか否か

  • A①:しない。
  • A②:自社側から重要なサンプルを提供する場合、サンプルは書面での特定なしに秘密情報とする。
  • B:自社側から重要なサンプルを提供する場合、サンプルは書面での特定なしに秘密情報とする。
  • C:しない。

第2条(秘密保持義務の内容について)

秘密保持義務を負う者(双務or片務)

  • A①:双務にする。片務は癪だから。
  • A②:双務にする。実態に鑑み双務にしないとダメ。
  • B:ぜひBのみの片務で。
  • C:双務。本当はそもそも秘密保持契約を締結したくない。

例外的に認められる開示先

  • 弁護士等、法令上守秘義務を負う者:今まで、ドラフトに書いてなかった場合、敢えて追記していなかったが、本当は追記したほうがいいですね。
  • 自己の役員および従業員:ドラフトに書いてなかったら追記する。
  • 自己の役員および従業員のうち、本目的の達成のため必要最小限の範囲の者:実態に応じて検討。具体的には、A①とCはない方がいい。A②ケースバイケース。Bはあった方がいい。
  • 子会社:実態に応じて検討。まぁOKか。具体的な社名を挙げて限定するケースもあり。
  • 親会社:実態に応じて検討。ちょっと慎重に。具体的な社名を挙げて限定するケースもあり。
  • グループ会社:広すぎるのでダメ。具体的な社名を挙げて限定することが多かった。

第3条

目的外使用の禁止

滅多にないが、たまに目的外使用の禁止条項が抜け落ちていることがある。この場合、どうするか。

  • A①:スルー?
  • A②:絶対入れる。当社側から重要な情報を出すという点を重視。
  • B:絶対入れる。当社側から重要な情報を出すという点を重視。
  • C:スルー?

第4条

注意義務の程度

  • ドラフトで特に言及なし:OK
  • 善管注意義務:OK
  • 自己と同一の注意義務:A②とBはNG。A①とCならスルー?(そもそも、あまりない)

第5条(複製について)

単に「複製してはならない」とする規定

  • A①:受入不可。実務上、履行できないから。
  • A②:受入不可。実務上、履行できないから。
  • B:特に修正しない。
  • C:受入不可。実務上、履行できないから。

「本目的の達成のため必要最小限を超えて複製してはならない」とする規定

  • A①:OK。
  • A②:OK。ここは、当社が情報を受領する側である点を重視。
  • B:OK。この場合、開示側に回るので、削除したほうが有利になるが、そこまで根を詰めて対応しない。
  • C:OK。

第6条

秘密情報の返還または破棄

以下、A①、A②、Cにおいて適用。Bは特に気にしない。

開示者が請求したときまたは本契約が終了したとき
開示者の選択に従い返還または破棄 NG。契約終了のタイミングですべて消すという対応が確実にできる保証がないため。
返還または破棄 NG。契約終了のタイミングですべて消すという対応が確実にできる保証がないため。
返還 NG。契約終了のタイミングですべて消すという対応が確実にできる保証がないため。
破棄 NG。契約終了のタイミングですべて消すという対応が確実にできる保証がないため。
開示者が請求したとき
開示者の選択に従い返還または破棄 NG。実務上、「返還」は履行できないため。
返還または破棄 OK。
返還 NG。実務上、「返還」は履行できないため。
破棄 OK。
本契約が終了したとき
開示者の選択に従い返還または破棄 NG。契約終了のタイミングですべて消すという対応が確実にできる保証がないため。
返還または破棄 NG。契約終了のタイミングですべて消すという対応が確実にできる保証がないため。
返還 NG。契約終了のタイミングですべて消すという対応が確実にできる保証がないため。
破棄 NG。契約終了のタイミングですべて消すという対応が確実にできる保証がないため。

第7条(損害賠償について)

損害賠償の範囲を民法上の規定よりも制限する規定

  • A①:スルー?
  • A②:絶対受入不可。当社側の重要な情報が十分に保護されないから。徹底抗戦。
  • B:絶対受入不可。当社側の重要な情報が十分に保護されないから。徹底抗戦。
  • C:スルー?

第8条

差止め

A①、A②、B、Cともに、あってもなくてもOK。実際に差止めが認められるかどうかは裁判所の判断によるため。

第9条

契約期間および秘密保持義務の存続期間

契約期間 契約期間満了後の存続期間 個人的な感覚
1年 なし 短めのやつとしてよくある
1年 短めのやつとしてよくある
3年 通常のやつとして割とある
5年 結構長いけど、ケースバイケースではあり得る
10年 長いけど、ケースバイケースではあり得る
3年 なし 短めのやつとしてよくある
1年 短めのやつとしてよくある
5年 なし 結構長いけど、ケースバイケースではあり得る
10年 なし 長いけど、ケースバイケースではあり得る

契約期間がない秘密保持契約

    • A①:NG。秘密保持義務が無期限となるから。
    • A②:NG。秘密保持義務が無期限となるから。A②でも、情報を受領する側であること=秘密情報の範囲を特定することを重視。
    • B:スルー。
    • C:NG。秘密保持義務が無期限となるから。本当はそもそも秘密保持契約を締結したくない。

    その他1

    反社条項

    • 契約解除できる
    • 秘密保持義務は存続させる

    その他2

    知的財産権の取り扱い

    次のいずれかからケースバイケースで選択。

    • 特に何も定めない。
    • 発明してはならない。勝手に出願してはいけない。(本来であれば、秘密保持契約締結後の共同開発契約等において発明を開始すべきなので。)
    • 万が一、発明が生じた場合、別途協議。勝手に出願してはいけない。(本来であればこの段階で発明を開始すべきではないが、製品適合化の検討の過程で意図せず発生することも考えられるので。)

    その他3

    知的財産権以外のたまにある条項

    • 秘密情報の内容の正確性の非保証規定:あってもなくてもOK。確認のための規定なので。
    • 本契約の締結は当事者に対し秘密保持義務の開示を義務付けるものではない旨の規定:あってもなくてもOK。確認のための規定なので。
    • 本契約の締結は今後何らの取引関係を約束するものではない旨の規定:あってもなくてもOK。確認のための規定なので。
    • リバースエンジニアリングの禁止:A②とBは、ケースバイケースで入れた方がいいかも。依頼元と相談。

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