監査役の退任に寄せて

雑記
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はじめに

今年は6月29日が集中日のようですね。

何時とは申しあげませんが、私が新卒で入社した会社でも株主総会が開催されました。

本総会の終了をもって、監査役が退任されました。

この監査役は私が新卒で入社した際の法務部長で、常務取締役まで昇進された方です。(以下「A部長」、「A取締役」または「A監査役」という。)

私の他にも転職した後輩がいるので、彼と一緒に、退任祝いの電報とささやかなプレゼントを差しあげました。

総会終了後、携帯のSMSにお礼のメッセージをいただきました。非常に嬉しかったです。というより、ドキドキしました。

携帯のメールでドキドキするという感覚は、学生の頃、女性にメールを送ったとき以来の感覚です。

ということで、しばし、思い出話にお付き合いください。

法務部配属前の話

人事部の粋な計らい

私が新卒で入社した会社は、当時、入社してから1年後に本配属部署が決まるという制度でした。

1年目は「研修」扱いで、いろいろな部署をたらい回しにしていただけるのです。

4か月の工場研修の後、私は本社の人事部で研修することになりました。

人事部の隣は法務部なのです。

私はどーしても法務部に行きたかったので、事あるごとに、周りの人に「法務に行きたい」と言っていました。

人事部の中心で「法務に行きたい」と騒いでいましたが、こういうのには寛容な会社でした。

むしろ、会社の夏祭りの際、人事部の方が「じゃあ法務部の宴会場に挨拶に連れて行ってあげよう」というような、粋な計らいをしてくれる会社でした。

説明責任

他にも、人事部は粋な計らいをしてくれました。

人事部が企画する新任課長研修会でA部長が講演(法務研修的なやつ)する際、オブザーバーとして私を同席させてもらったのです。

当時、私はどーしても法務部に行きたかったため、当時、必死にメモをとっていました。

そのメモはもう捨ててしまいましたが、A部長の講演は、たしか、次のような内容だったと記憶しています。

  • これからは「アカウンタビリティ(説明責任)」の時代だ
  • 今までは「自社の基準に従って対応しているので問題ないです」が通用したが、今後は通用しない
  • 今後は自社の基準がどのようなものであるかを社外に説明し、その基準をいかに満たしているかを説明することが大事だ

と仰っていたような気がします。

まだ、自動車業界や素材メーカーで品質データ偽装事件が発生する前の話です。

新卒で入社した会社はメーカーだったため、A部長は「製造現場における自社の基準」を例に出して説明されていました。

そんな感じで、法務部の隣の人事部で仕事をしていたので、A部長は顔を覚えてくださいました。

全く意味のない伏字とロッキード事件

ある日、何かの機会で会話することがあり、A部長から

「お前、○○大学出身らしいな!吉永裕介知ってるか!お前の先輩やぞ!ロッキード事件や!

と、急にぶっ込まれました。

ロッキード事件なんか私が生まれる前の出来事なので、知っているわけがなく、めっちゃ焦りました。

これはヤバいと思い、その日、帰宅するや否や、Amazonで本を買いました。

今、Amazonでページを開いたところ、
「最後にこの商品を購入したのは2010/10/27です。」
という生々しいメッセージが出てきました。うわぁ。

運命のトイレ

あれは人事部での研修が終わりを迎えつつある12月のことでした。

トイレで用を足し、手を洗っていると、横の洗面台にA部長が来て、手を洗いながら急に話しかけてこられました。

「お前、転勤とか大丈夫か?」

当時は独身で、特に問題なかったので「はい、大丈夫です。」と手を洗いながら答える私。

「そうか。わかった。」と頷くA部長。

全て、トイレの洗面台での出来事です。

そして3月の本配属先発表で、私は見事、東京の法務部に配属されたのでした。

後から思えば、トイレの会話が

配属が決まってA部長のもとへ挨拶に行った際、言われた一言。

「お前、輸出管理って知ってるか?昔のCOCOMや。よう勉強せえよ。」

こうして私の輸出管理キャリアが始まったのです。

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法務部配属後の話

法務部配属後、A部長と一緒に仕事をする機会はほとんどないまま、A部長は取締役に就任されました。

仕事でご一緒できたのは、年に1回、株主総会のスタッフとして出張に行くぐらいです。

本社出張の際に崎陽軒のシウマイ弁当を食べるようになったのは、この頃からです。

あと、A取締役はちょくちょく出張で東京にお越しいただいたので、お越しいただいた際はたくさん雑談していただきました。

もう一回、説明責任の話

私は法務担当者になる前の1年間に上記のような経験があったためか、法務担当者として

「説明すること」

を重視しています。(こういう書き方すると、就活の自己PRみたいでイヤですね。)

昔、輸出管理をやっていた頃、事業部から来る社内申請書の内容がイマイチ言葉足らずだと感じたときは、迷うことなく「備考欄」に法務担当者としてメモを書きまくっていましたが、まさにこれはA部長の仰っていた

「自社が如何に基準(法的要件)を満たしているかを説明する」

ということの実践ですね。経産省による輸出管理の監査の際には社内申請書を見られますからね。

幸か不幸か、結局、私が転職するまでの間、経産省は一度も監査に来てくれませんでしたけど。

まあ、このやり方を突き詰めると、「如何に、形だけは法的要件を満たしたような感じにするか」という、実態ナシのスカスカ形式主義になってしまって良くないのですが、それはまた別の話。

法的要件は六法に書いてあるので、

「自社は要件を満たしていることをどうやって社内外に示すか」

という点に知恵を絞るのが、企業の法務担当者の腕の見せ所だと思うのです。

A部長の講演を聞いた際、気づき事項として、このようなことを自分のノートに書いていた覚えがあります。

社内申請書一つを例に挙げてもそうですし、もちろん、ヤバいスキームの法律相談が来たときや、目を閉じたくなるようなアカン契約書が来たときも、法務担当者は相談相手に対してわかりやすく説明することが求められています。

これらは「自社が要件を満たしていることを示す」という意味合いではなく、純粋に「法的な内容をわかりやすく法務部以外の部署の方に伝えよう」という意味での「説明」ですが、これも法務担当者として重要な仕事だと考えています。

また、今は純粋な法務担当者としての仕事は減り、代わりに出向先で日々発生するいろいろな出来事を本社に報告していますが、これも、「わかりやすく説明する」という大事な仕事です。

(海外の出向先で発生する出来事を要領よく正確に本社に報告するというのは、地味ですが、なかなか難しい仕事です。実際やってみて、よくわかりました。)

とにかく「社内外にわかりやすく説明する」というのは、法務担当者の重要な任務だと考えています。

最後に

繰り返しになりますが、今年の総会終了をもって、お世話になったA監査役が退任されました。

今、私が法務担当者を名乗れるのは、間違いなくA監査役のおかげです。

私は途中で転職してしまいましたが、在籍中は本当にお世話になりました。

本記事では一点だけフィクションがあります。
私が新卒で入社した会社がどこかを知っており、かつ、商業登記法の知識がある方であれば、どの部分がフィクションか発見できると思いますので、ウォーリーを探すノリで探してみてください。

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