本記事は日本から台湾への猫の輸出手続について定めた法令の内容を確認することを目的としており、必ずしも理解しやすい内容になっていません。
猫の輸出手続について書類のサンプルやフローチャート等を用いてわかりやすくまとめたページはこちらです。
本記事は2018年の秋から冬にかけて筆者が調べた情報をもとに、2020年の夏に執筆されています。最新の情報を反映できていない可能性がありますので、ご注意ください。
前回の続きです。今回は第三章の後半ということで、台湾当局のウェブサイトの指示事項によって、日本での検疫手続がどのような影響を受けるかを確認します。
第三章:「B.愛猫の台湾入国手続」
5.「B-3.日本政府から輸出検疫証明書を取得すること」について
(1)本要件に関する詳細規定および根拠法令
本要件に関する詳細規定および根拠法令は次のとおり。
- B-3-1.輸出検疫証明書の言語は英語または中国語であること(台湾検疫条件第6)
- B-3-2-2.「愛猫の品種」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.1)
- B-3-2-3.「愛猫の性別」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.1)
- B-3-2-4.「愛猫の年齢」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.1)
- B-3-2-5.「愛猫のマイクロチップ識別番号」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.1)
- B-3-2-6.「愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)」の予防接種を受けさせたこと」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.3)
- B-3-2-7.「愛猫の予防接種日」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.3)
- B-3-2-8.「予防接種日が愛猫の輸入日の30日前から1年以内の期間内であること」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.3、第4.2)
- B-3-2-9.「予防接種日において、愛猫は生後91日以上であること」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.3、第4.2)
- B-3-2-10.「予防接種した狂犬病ワクチンの種類」が輸出検疫証明書に記載されていること(根拠法令?)
- B-3-2-11.「愛猫に狂犬病の臨床症状がない旨」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.2)
- B-3-2-12.「愛猫は輸出前の180日間または出生後一貫して日本で飼育されていること」が輸出検疫証明書に記載されていること(台湾検疫条件第6.4)
- B-3-2-13.「台湾当局が発行した輸入検疫同意書の輸入許可番号」が輸出検疫証明書に記載されていること(根拠法令?)
(2)輸出検疫証明書交付前に遡った対応の必要性
B-3-1.からB-3-2-13.までの要件は、「第二章の手続により日本国政府の動物検疫所から交付される輸出検疫証明書について」充足している必要がある。したがって、序章で触れたとおり、日本での狂犬病検査実施後に交付される輸出検疫証明書がB-3-1.からB-3-2-13.までの要件を充足するよう、本章の内容を参照したうえで、日本での狂犬病検査の実施前の段階で必要となる事項を逆算して対応しなければならない。
この点につき、第二章で紹介した出国要件公式サイトには、次の記載がある。
入国条件で求められている処置や検査結果を、動物検疫所が発行する輸出検疫証明書に記載する必要がある場合は、開業獣医師の発行する証明書や検査機関の発行する検査結果通知書を事前に取得し、動物検疫所の出国検査の際に原本を提出してください。
https://www.roc-taiwan.org/jp_ja/post/60578.html
犬・猫の日本から台湾への輸入検疫規定の手続き
要するに、輸出検疫証明書に対して一定の事項の記載を希望する場合、当該事項を証明する書類を添えて動物検疫所に申し出れば、動物検疫所はこれに応じるということである。この点については、犬等の輸出検疫要領(平成20年10月6日付け20 動検第718号、平成31年3月29日付け30 動検第1334号(一部改正)、以下「輸出検疫要領」という。)に、より詳細な記載がある。
4 輸出検疫証明書の交付
<略>なお、マイクロチップの埋込日等、狂犬病予防注射及びその他の予防注射の接種履歴、狂犬病の中和抗体検査の採血日・指定検査施設は、実施した獣医師による証明書、公的機関の証明書又は日本の家畜防疫官が証明した書類を確認の上、記載する。また、狂犬病の中和抗体検査及び結果については、指定検査施設が発行した検査結果書または日本の家畜防疫官が証明した書類を確認の上、記載する。狂犬病予防注射の有効免疫期限は、接種された予防注射の製造者が定める期限に従って記載する。
輸出検疫要領
(3)「日本での輸出検疫時に」必要な提出書類の確認
B-3-2-2.からB-3-2-13.までの要件について、輸出検疫要領における言及の有無を整理すると次のとおりとなる。(言語については通常は英文で発行されるため、B-3-1.は省略する。)
- B-3-2-2.「愛猫の品種」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及無し
- B-3-2-3.「愛猫の性別」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及無し
- B-3-2-4.「愛猫の年齢」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及無し
- B-3-2-5.「愛猫のマイクロチップ識別番号」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及有りと解釈可(証明書類の提出が必要)
- B-3-2-6.「愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)」の予防接種を受けさせたこと」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及有り(証明書類の提出が必要)
- B-3-2-7.「愛猫の予防接種日」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及有り(証明書類の提出が必要)
- B-3-2-8.「予防接種日が愛猫の輸入日の30日前から1年以内の期間内であること」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及有り(証明書類の提出が必要)
- B-3-2-9.「予防接種日において、愛猫は生後91日以上であること」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及無し
- B-3-2-10.「予防接種した狂犬病ワクチンの種類」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及有り(証明書類の提出が必要)
- B-3-2-11.「愛猫に狂犬病の臨床症状がない旨」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及無し
- B-3-2-12.「愛猫は輸出前の180日間または出生後一貫して日本で飼育されていること」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及無し
- B-3-2-13.「台湾当局が発行した輸入検疫同意書の輸入許可番号」が輸出検疫証明書に記載されていること→言及無し
上記において輸出検疫時に証明書類の提出が必要であるとされた要件について、具体的に提出すべき書類は次のとおりである。
- ・B-3-2-5.→日本獣医師会が発行する「マイクロチップデータ登録完了通知書」
- ・B-3-2-6.からB-3-2-10.まで→予防接種時に獣医師が発行する予防接種証明書
加えて、B-3-2-13.については出国要件公式サイトおよび輸出検疫要領のいずれにおいても言及されていないが、輸入許可番号を家畜検疫官に伝える必要があることから、検疫時に輸入検疫同意書を提示する必要がある点、実務面では注意を要する。
なお、輸出検疫要領において言及されていない要件(B-3-2-2.からB-3-2-4.まで、B-3-2-9.およびB-3-2-11.からB-3-2-12.まで。B-3-2-13.は言及されていないが提出するという前提のため、検討外とする。)について、証明書類の提出が必要か否かについて未だ明確になっていない。この点につき、筆者が愛猫を輸出した場合の事例では、動物検疫所 羽田空港支所 検疫課に電子メールで相談した際、これらの要件については輸出検疫証明書への記載につき証明書類の提出が不要である旨、事前に回答を得ていた。また、実際に検疫を受けた際も、これらの要件について動物検疫所から提出を求められることは無かった。
6.「B-4.台湾到着後、愛猫に対し入国検疫を受けさせること」について
(1)本要件に関する詳細規定および根拠法令
本要件に関する詳細規定および根拠法令は次のとおり。
- B-4-1.入国検疫時に輸入検疫同意書を提出すること(台湾検疫条件第7.1)
- B-4-2.入国検疫時に輸出検疫証明書(原本に限る)を提出すること(台湾検疫条件第7.2)
- B-4-3.入国検疫時に税関申告書を提出すること(台湾検疫条件第7.3)
(2)実務上の注意事項
B-4-2.の輸出検疫証明書は必ず原本を提出する必要があると定められているため、機内持ち込み手荷物として紛失しないよう細心の注意を図るべきである。なお、B-4-3.の税関申告書は飛行機の中で客室乗務員が配布するため、事前に用意する必要はない。
無事、台湾での入国検疫が終わると、ようやく愛猫と共に入国することができる。
7.まとめ
本稿においてこれまでに確認した手続および要件ならびに法令上の根拠は次のとおりである。既述のとおり、「B.愛猫の台湾入国手続」に対応する過程で、「A.愛猫の日本出国手続」にも追加的変更が生じていることから、第二章末尾の表をアップデートする形で記載する。
要件番号 | 要件 | 提出書類 | 根拠規定 |
---|---|---|---|
A | 愛猫の日本出国手続 | ||
A-1 | 愛猫に対し、出国前に動物検疫所で狂犬病検査を受診させること | 狂犬病予防法に基づく動物の輸出検査申請書 | 規則第3条第1項 |
A-2 | 動物検疫所から輸出検疫証明書の交付を受けること | - | 規則第9条第1項 |
B-3-1 | 輸出検疫証明書の言語は英語または中国語であること | - | 台湾検疫条件第6 |
B-3-2-2 | 「愛猫の品種」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.1 |
B-3-2-3 | 「愛猫の性別」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.1 |
B-3-2-4 | 「愛猫の年齢」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.1 |
B-3-2-5 | 「愛猫のマイクロチップ識別番号」が輸出検疫証明書に記載されていること | マイクロチップデータ登録完了通知書 | 台湾検疫条件第6.1 |
B-3-2-6 | 「愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)」の予防接種を受けさせたこと」が輸出検疫証明書に記載されていること | 獣医師作成の、日本語の予防接種証明書 | 台湾検疫条件第6.3 |
B-3-2-7 | 「愛猫の予防接種日」が輸出検疫証明書に記載されていること | 獣医師作成の、日本語の予防接種証明書 | 台湾検疫条件第6.3 |
B-3-2-8 | 「予防接種日が愛猫の輸入日の30日前から1年以内の期間内であること」が輸出検疫証明書に記載されていること | 獣医師作成の、日本語の予防接種証明書 | 台湾検疫条件第6.3、第4.2 |
B-3-2-9 | 「予防接種日において、愛猫は生後91日以上であること」が輸出検疫証明書に記載されていること | 獣医師作成の、日本語の予防接種証明書 | 台湾検疫条件第6.3、第4.2 |
B-3-2-10 | 「予防接種した狂犬病ワクチンの種類」が輸出検疫証明書に記載されていること | 獣医師作成の、日本語の予防接種証明書 | 根拠法令? |
B-3-2-11 | 「愛猫に狂犬病の臨床症状がない旨」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.2 |
B-3-2-12 | 「愛猫は輸出前の180日間または出生後一貫して日本で飼育されていること」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.4 |
B-3-2-13 | 「台湾当局が発行した輸入検疫同意書の輸入許可番号」が輸出検疫証明書に記載されていること | 輸入検疫同意書 | 根拠法令? |
B | 愛猫の台湾入国手続 | ||
B-1 | 愛猫にマイクロチップを装着させ、狂犬病の予防接種を受けさせること | ||
B-1-1 | 愛猫にマイクロチップを装着させること | - | 台湾検疫条件第4.1 |
B-1-2 | 愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)の予防接種を受けさせること | - | 台湾検疫条件第4.2 |
B-1-3 | 予防接種日が愛猫の輸入日30日前から1年以内の期間内であること | - | 台湾検疫条件第4.2 |
B-1-4 | 予防接種日において愛猫は生後91日以上であること | - | 台湾検疫条件第4.2 |
B-2 | 台湾当局から輸入検疫同意書を取得すること | ||
B-2-1 | 愛猫の輸入日の20日前までに輸入検疫同意書の申請を行うこと | - | 台湾検疫条件第5.1 |
B-2-2 | 輸入検疫同意書の申請時にパスポートを添付すること | パスポート | 台湾検疫条件第5.1.1 |
B-2-3 | 輸入検疫同意書の申請時に獣医師の予防接種証明書を添付すること | 任意のフォーマットによる獣医師の予防接種証明書 | 台湾検疫条件第5.1.2 |
B-2-3-1 | 予防接種証明書の言語は英語または中国語であること | - | 台湾検疫条件第5.2 |
B-2-3-2 | 「愛猫の品種」が予防接種証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第5.2 |
B-2-3-3 | 「愛猫の性別」が予防接種証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第5.2 |
B-2-3-4 | 「愛猫の年齢」が予防接種証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第5.2 |
B-2-3-5 | 「愛猫のマイクロチップ識別番号」が予防接種証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第5.2 |
B-2-3-6 | 「愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)」の予防接種を受けさせたこと」が予防接種証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第5.2 |
B-2-3-7 | 「愛猫の予防接種日」が予防接種証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第5.2 |
B-2-3-8 | 「予防接種日が愛猫の輸入日の30日前から1年以内の期間内であること」が予防接種証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第5.2、第4.2 |
B-2-3-9 | 「予防接種日において、愛猫は生後91日以上であること」が予防接種証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第5.2、第4.2 |
B-2-3-10 | 「予防接種した狂犬病ワクチンの種類」が予防接種証明書に記載されていること | - | 根拠法令? |
B-3 | 日本政府から輸出検疫証明書を取得すること | ||
B-3-1 | 輸出検疫証明書の言語は英語または中国語であること | - | 台湾検疫条件第6 |
B-3-2-2 | 「愛猫の品種」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.1 |
B-3-2-3 | 「愛猫の性別」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.1 |
B-3-2-4 | 「愛猫の年齢」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.1 |
B-3-2-5 | 「愛猫のマイクロチップ識別番号」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.1 |
B-3-2-6 | 「愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)」の予防接種を受けさせたこと」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.3 |
B-3-2-7 | 「愛猫の予防接種日」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.3 |
B-3-2-8 | 「予防接種日が愛猫の輸入日の30日前から1年以内の期間内であること」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.3、第4.2 |
B-3-2-9 | 「予防接種日において、愛猫は生後91日以上であること」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.3、第4.2 |
B-3-2-10 | 「予防接種した狂犬病ワクチンの種類」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 根拠法令? |
B-3-2-11 | 「愛猫に狂犬病の臨床症状がない旨」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.2 |
B-3-2-12 | 「愛猫は輸出前の180日間または出生後一貫して日本で飼育されていること」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 台湾検疫条件第6.4 |
B-3-2-13 | 「台湾当局が発行した輸入検疫同意書の輸入許可番号」が輸出検疫証明書に記載されていること | - | 根拠法令? |
B-4 | 台湾到着後、愛猫に対し入国検疫を受けさせること | ||
B-4-1 | 入国検疫時に輸入検疫同意書を提出すること | 輸入検疫同意書 | 台湾検疫条件第7.1 |
B-4-2 | 入国検疫時に輸出検疫証明書(原本に限る)を提出すること | 輸出検疫証明書(原本に限る) | 台湾検疫条件第7.2 |
B-4-3 | 入国検疫時に税関申告書を提出すること | 税関申告書 | 台湾検疫条件第7.3 |