愛猫の輸出手続 第三章:「B.愛猫の台湾入国手続」前半

猫の輸出手続
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本記事は日本から台湾への猫の輸出手続について定めた法令の内容を確認することを目的としており、必ずしも理解しやすい内容になっていません。
猫の輸出手続について書類のサンプルやフローチャート等を用いてわかりやすくまとめたページはこちらです。

本記事は2018年の秋から冬にかけて筆者が調べた情報をもとに、2020年の夏に執筆されています。最新の情報を反映できていない可能性がありますので、ご注意ください。

前回の続きです。この章は特に分量が多く複雑なので、2回に分けて投稿します。今回は前半部分ということで、主に台湾当局のウェブサイトの指示事項を確認します。

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第三章:「B.愛猫の台湾入国手続」

1.愛猫の輸入検疫に関する台湾法令の概要

 台湾における愛猫の輸入検疫について定めている法令は「動物傳染病防治條例」(以下「台湾法」という。)および同法の下位法令である「動物及動物產品輸入檢疫條件(農防字第1090218436號 公告)である。愛猫に関する具体的な検疫条件は動物及動物產品輸入檢疫條件の別添1の24に「犬貓之輸入檢疫條件」として定められているため、愛猫の輸入に限れば、この別添1の24を確認すればよい。(以下、動物及動物產品輸入檢疫條件(農防字第1090218436號 公告)附件一之二十四 犬貓之輸入檢疫條件を「台湾検疫条件」という。)

 愛猫の輸入検疫に関する台湾法令を確認したため、以後、「B.愛猫の台湾入国手続」の詳細について確認する。

2.公式ウェブサイトの記載内容の確認

 「B.愛猫の台湾入国手続」について検討するにあたり、下記のウェブサイトを参照する。(以下、下記のウェブサイトを「入国要件公式サイト」という。)

The website is under repair
The website is under repair

 入国要件公式サイトは台北駐日経済文化代表処(駐日台湾大使館に相当する機関)が運営しており、日本語で詳細に情報提供がなされている。

 入国要件公式サイトによると、「B.愛猫の台湾入国手続」の要件は次のとおり。

  • B-1.愛猫にマイクロチップを装着させ、狂犬病の予防接種を受けさせること
  • B-2.台湾当局から輸入検疫同意書を取得すること
  • B-3.日本政府から輸出検疫証明書を取得すること
  • B-4.台湾到着後、愛猫に対し入国検疫を受けさせること

 以下、まずは愛猫の輸入検疫に関する台湾法令の概要を確認し、その後、上記4要件の詳細な規定およびそれらに係る具体的な根拠法令を確認することとしたい。

3.「B-1.愛猫にマイクロチップを装着させ、狂犬病の予防接種を受けさせること」について

(1)本要件に関する詳細規定および根拠法令

 本要件に関する詳細規定および根拠法令は次のとおり。

  • B-1-1.愛猫にマイクロチップを装着させること(台湾検疫条件第4.1)
  • B-1-2.愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)の予防接種を受けさせること(台湾検疫条件第4.2)
  • B-1-3.予防接種日が愛猫の輸入日30日前から1年以内の期間内であること(台湾検疫条件第4.2)
  • B-1-4.予防接種日において愛猫は生後91日以上であること(台湾検疫条件第4.2)

(2)マイクロチップの装着について

 「B-1-1.愛猫にマイクロチップを装着させること」は、後述する「C.愛猫帰国時の待機期間短縮手続」のC-1と重複する。ただし、「B-1-1.愛猫にマイクロチップを装着させること」については装着させるマイクロチップの規格は特に定められていないが、後述のC-1-1では「ISO11784および11785の規格に準拠したマイクロチップ」を装着しなければならないと定められている。したがって、これらの規格に準拠したマイクロチップを埋め込まなければならない。

 「B.愛猫の台湾入国手続」の要件であるB-1-1では、マイクロチップの規格が定められていない。したがって、愛猫と共に二度と日本には帰らないという不退転の覚悟で渡台する場合は、理論上、これらのISO規格に準拠していないマイクロチップが装着された愛猫であっても台湾への入国が認められることになるが、念のため、この場合における実務上の取扱いについては事前に台湾当局へ確認しておくべきであろう。

 なお、上記において「B-1-1では装着させるマイクロチップの規格は特に定められていない」と述べたが、これはあくまでも「筆者が確認できる範囲で確認した限りではマイクロチップの規格に関する規定を見つけることができなかった」という趣旨である。実際には何らかの規格が定められている可能性もあるため、注意されたい。

 以上、長々と検討したが、現在日本で流通しているマイクロチップは全てISO11784および11785の規格に準拠しているため、一般的な事例においてマイクロチップのISO規格が問題になることは少ないと考える。

<略>日本で統一して流通されているマイクロチップはISO11784/5に準拠しているFDX-Bという規格になり、起動周波数は134,2kHz、コード体型は15桁の数字で表れます。<略>

http://nichiju.lin.gr.jp/aigo/index.html
動物の福祉及び愛護
マイクロチップを用いた動物の個体識別
規格

(3)その他「C.愛猫帰国時の待機期間短縮手続」と重複する要件

 マイクロチップの装着以外に、「B-1-2.愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)の予防接種を受けさせること」および「B-1-4.予防接種日において愛猫は生後91日以上であること」についても「C.愛猫帰国時の待機期間短縮手続」との重複が見られる。前者と重複する要件はC-2-1およびC-3-1であり、後者と重複する要件はC-2-2である。詳細については第四章:「C.愛猫帰国時の待機期間短縮手続」にて後述する。

4.「B-2.台湾当局から輸入検疫同意書を取得すること」について

(1)本要件に関する詳細規定および根拠法令

 本要件に関する詳細規定および根拠法令は次のとおり。

  • B-2-1.愛猫の輸入日の20日前までに輸入検疫同意書の申請を行うこと(台湾検疫条件第5.1)
  • B-2-2.輸入検疫同意書の申請時にパスポートを添付すること(台湾検疫条件第5.1.1)
  • B-2-3.輸入検疫同意書の申請時に獣医師の予防接種証明書を添付すること(台湾検疫条件第5.1.2)
  • B-2-3-1.予防接種証明書の言語は英語または中国語であること(台湾検疫条件第5.2)
  • B-2-3-2.「愛猫の品種」が予防接種証明書に記載されていること(台湾検疫条件第5.2)
  • B-2-3-3.「愛猫の性別」が予防接種証明書に記載されていること(台湾検疫条件第5.2)
  • B-2-3-4.「愛猫の年齢」が予防接種証明書に記載されていること(台湾検疫条件第5.2)
  • B-2-3-5.「愛猫のマイクロチップ識別番号」が予防接種証明書に記載されていること(台湾検疫条件第5.2)
  • B-2-3-6.「愛猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)」の予防接種を受けさせたこと」が予防接種証明書に記載されていること(台湾検疫条件第5.2)
  • B-2-3-7.「愛猫の予防接種日」が予防接種証明書に記載されていること(台湾検疫条件第5.2)
  • B-2-3-8.「予防接種日が愛猫の輸入日の30日前から1年以内の期間内であること」が予防接種証明書に記載されていること(台湾検疫条件第5.2、第4.2)
  • B-2-3-9.「予防接種日において、愛猫は生後91日以上であること」が予防接種証明書に記載されていること(台湾検疫条件第5.2、第4.2)
  • B-2-3-10.「予防接種した狂犬病ワクチンの種類」が予防接種証明書に記載されていること(根拠法令?)

(2)申請方法

 輸入検疫同意書の申請は、「犬貓進口同意文件申請書(Application Form for Dog/Cat Import Permit)」のフォーマットに必要事項を記入し、添付書類とともに台湾当局へ郵送する方法またはオンラインにより申請する方法のいずれかによるが、手続の煩雑さおよび時間節約の観点からオンライン申請を強く推奨する。

 オンライン申請のウェブサイトは次のとおり。

https://pet-epermit.baphiq.gov.tw/

 オンライン申請の場合、上記のページにアクセスした後、「more…」の部分をクリックする必要がある。この「more…」をクリックすると、画面左上に「輸入同意文件線上申請(英文版:New Application)」というタブが表示される。当該タブをクリックすることにより申請に必要な項目の入力画面が表示される。

 ちなみに、書面申請の場合における申請書のフォーマット(犬貓進口同意文件申請書:Application Form for Dog/Cat Import Permit)は次のウェブサイトからダウンロードすることができる。

https://www.baphiq.gov.tw/ws.php?id=13028

(3)実務上の注意事項

 当該申請については「B-2-1.愛猫の輸入日の20日前までに輸入検疫同意書の申請を行うこと」という規定に注意すべきであるが、実務上はこれよりも更に重要な注意事項が存在する。それは、申請項目として「①台湾渡航後の住所」「②台湾渡航後の電話番号」および「③本件申請に係る台湾側の連絡人物」が要求されており、申請時までにこれらを準備しておく必要があるという点である。つまり、当該申請時までに台湾渡航後に住居を確保し、台湾で使用する携帯電話を確保し、さらに本件申請に協力してくれる台湾在住者を確保する必要がある。

 筆者の事例では、台湾赴任前の引継ぎの際に渡航後の住居を選定するとともに、出向先の日本語が堪能な総務担当者に本件の事情を説明して台湾側の連絡人物となることを依頼した。また、電話番号については台湾用の会社携帯電話を入力することで、無事対応することができた。このように、筆者の場合は幸いにも首尾よく進んだが、他の事例ではこれら3点の準備が難しいことも予想されるため、十分に注意して前広に対応すべきである。

 なお、筆者の場合、輸入検疫同意書は申請者本人ではなく「③本件申請に係る台湾側の連絡人物」宛に送付されたことから、当連絡人物については信頼できる者を選定することを強く推奨する。

(4)予防接種証明書のフォーマットについて

 「B-2-3.輸入検疫同意書の申請時に獣医師の予防接種証明書を添付すること」も実務対応時に戸惑う可能性があるため、説明を加える。獣医師の予防接種証明書については、作成にあたっての要件がB-2-3-1.からB-2-3-10.まで列挙されているが、台湾当局の各ウェブサイトを探しても、これらの要件を満たした予防接種証明書のフォーマットが存在しない。

 この点につき、筆者が2018年末に白金台の台北駐日経済文化代表処を訪問して確認したところ、「特定のフォーマットは存在しない。法令で定める要件を充足した申請書を各申請者が任意に作成すればよい。」との回答を得た。(余談であるが、当初、本件につき質問したところ「本国の担当者ではないので責任が持てず、回答できない。」との対応を受けた。その後粘りに粘って、どうにか白金台から本国の担当者(?)に電話を繋いでもらい、何とか上記の見解を得た次第である。ギリギリの状態でコミュニケーションしていたため、あまり詳細な記憶がない。)

 上記の点を踏まえたうえでの実務上の対応手順の例は次のとおり。

  1. B-2-3-1.からB-2-3-10. を網羅した英文の予防接種証明書を自ら作成する。
  2. 予防接種後、獣医師から日本語の予防接種証明書を取得する。
  3. 獣医師の証明書の記載事項のうち、接種日やワクチンの種類等の項目を自作した予防接種証明書に転記する。
  4.  必要項目が転記された英文の予防接種証明書を動物病院に持参し、獣医師からサインを取得する。

【参考】筆者が作成した予防接種証明書のフォーマットはこちらを参照。 

なお、日本語の予防接種証明書は台湾当局へは提出しないものの、「C.愛猫帰国時の待機期間短縮手続」の関係で日本からの出国時に動物検疫所に提出する必要があるため、確実に保管しておく必要がある。(詳細は第四章)

(第三章:後半に続く)

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