書評:図解入門ビジネス 台湾ビジネス法務の基本がよ~くわかる本

書評(本以外含む)

手元にある台湾法の書籍についてレビューします。

図解入門ビジネス 台湾ビジネス法務の基本がよ~くわかる本
遠藤 誠 (著), 紀 鈞涵 (著)

筆者が前職の研修で初めて台湾を訪れた際に購入したものの、当時は語学研修であったため全然読まず、帰国後にブックオフで処分したところ、現職でまさかの台湾駐在を命じられ、渡航前に慌てて買い直したという曰くつきの一冊です。

2014年の初版から改正版が出ておらず、最新の法令には対応できていないため、結局実務でガッツリ使うことができず持て余していましたが、赴任からある程度時間が経過した今、「法令の改正点については把握できないが、もっと抽象的な部分から学びを得るには?」という視点でレビューしてみます。

まず第一章。法律云々ではなく、まずは「台湾ってこんなところ」という、ビジネスをする上での台湾の商慣習などについての解説です。内容柄、法律に触れていないため法改正の影響を受けておらず、そういう意味では2020年でも新鮮な情報です。イヤ本当に、今まで台湾に関心のなかった法務担当者が台湾赴任を命じられた場合、法律の内容よりもこういう背景事情の方が役に立つと思います。余談ですが、本ブログの猫の記事にも出てくる「台北駐日経済文化代表処」も紹介されていることに今気づきました。自分でもビックリしています。

次に第二章。台湾の法律条文および判例の探し方について説明されている部分が印象的です。法律条文の探し方については、また別の機会に当ブログでも紹介しようかと思っていますが。主要な法律については英訳版も掲載されているので、「条文の文言としては何て書いてあるの?」という切り口から調べるときは便利かもしれません。一方、判例については自力で探したことはありません。こんなの凡人には無理です。判例を調べないといけないようなトラブル時は、迷わず法律事務所にお願いしています。

そして第三章。民法や会社法など、ビジネスで使う主要な法律の概要が記載されています。ちょっと民法の記載内容を見てみましょう。

 台湾の民法と日本の民法の一つの大きな相違点は、不動産物件の取得、設定、喪失または変更に関する登記につき、日本の採用している「登記対抗主義」とは異なり、ドイツに倣い登記発行主義を採っていることにあります。

 したがって、台湾において不動産所有権の取得や抵当権の設定は、登記を経なければその効力を生じず、不動産の登記は対抗要件にとどまらず、絶対的効力を有することに注意を要します。

図解入門ビジネス 台湾ビジネス法務の基本がよ~くわかる本 54頁

私はこの記述を見て「台湾法を詳細規定を自主的に勉強するのはやめよう」と固く心に誓いました。登記が効力発生要件ですって。本職(=受験勉強)に悪影響が出たらどうするのでしょうか。

その他、第三章で印象に残っているのは「公平取引法」(=日本の独占禁止法に相当する法)に関する記述ですね。別にカルテルや企業結合規制がどうしたという話ではなく、台湾ではいわゆるマルチ商法についても、この「公平取引法」(およびその関連法令)によって規制されているとのことです。過去、台湾のマルチ商法で怖い目に遭いかけた私としては、当時、この頁だけは妻と一緒に熟読しました。

次、話は飛んで第五章。会社法の話です。機関設計や決議要件に関する細かい条文の規定が紹介されており、発刊当時は非常に有用だったものと推測されますが、会社法も改正があったハズですので、実際の運用に当たっては法律事務所等への裏取りが必要でしょう。それよりも普遍的な知識として、次の記載は必読に値します。

会社法上の経理人(日本でいう「支配人」に相当)は、同時に民法債権編の経理人の定義にも該当するため、民法上の経理人の規定も適用されます。<略>・・・実務上、台湾の会社は、よく「経理」などの肩書を新入社員に与えることがありますが、これは、「マネージャー」というほどの意味ですが、非常に紛らわしく、将来様々な紛争を引き起こす可能性もありますので、注意を要します。

図解入門ビジネス 台湾ビジネス法務の基本がよ~くわかる本 174頁

まず一点、補足というか訂正ですが、私が台湾で働いた限りでは、「マネージャー」に相当する「経理」の肩書を新入社員に与えることいったことは聞いたことがありません。私のイメージでは、「経理」というのは日本でいうところの「部長級」の肩書です。この点は割り引いて考える必要がありますが、次の知識は非常に重要です。

  • 「経理人」・・・日本でいう「支配人」に相当する。広範な法的権限あり。
  • 「経理」 ・・・日本でいう「部長級」の肩書。結構偉い従業員。

最後に第六章をご紹介。労務関係の法令ですね。台湾の労働法令は労働者保護の傾向が強いので、法務担当者としては慎重な対応が必要となります。労働法令もたくさん改正されているハズですので、この本だけでは対応できませんが、実際に実務を担当した後、振り返って復習する分にはよいかもしれません。

以上、総評として「実務では使えないが、振り返って復習するにはよい教材。法令の詳細ではなく、台湾でビジネスを進めるうえでの考え方を学ぶテキストとして割り切れば満足度も上がる。」といった感じです。なんだかんだ言って、個人的には割と好き。

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