書評:メーカー取引の法律実務Q&A

書評(本以外含む)

新ブログでは、いわゆる書評の企画をやろうと思っています。ブログ開設当初にお越しいただくであろう想定読者として、筆者のご学友の皆様をイメージしていますが、その大半の方が公務員かと推測します。一方、筆者は世を忍ぶ仮の姿として、いちおう企業の法務担当者を務めていますので、「民間企業ではこんなこと考えているのか」といったギャップが楽しめるのではないかと考えています。もちろん、そのうち司法書士試験の教材も紹介する予定です。

さて、記念すべき第一回目の書評はこちらです。

メーカー取引の法律実務Q&A
筬島 裕斗志 (著), 島田 邦雄 (著), 木村 和也 (著), 冨岡 孝幸 (著), 吉野 彰 (著), 瀧本 文浩 (著)

その名のとおり、製造業で問題になりそうな法的問題をQ&A形式の一問一答で回答しています。仕事で使うという観点からは、問題に対する考え方の筋道について、根拠法令等を示しながら解説がなされているという点が非常に有用です。

たとえば、営業から問い合わせがあった際に、何か回答しないといけませんが、「この場合は大体こういう感じで考えます。」と答えるわけにはいきません。周りの先輩の見様見真似で「何となく、この事例ではこのように対処する」という勘所はわかっていても、それを根拠づける法令等が必要になります。

この本の良いところは、その根拠法令や考え方の道筋が端的にまとめられているため、問い合わせに対する回答の模範例として非常に有用です。また、かなり微妙な事例もたくさん収録されており、このような事例に対しては確認すべき事実関係の要所がまとめられています。

実際問題として、微妙な事例で本当に揉めた場合は弁護士さんに相談するケースも多いかと思いますが、仮の事案として、営業から「こういう場合どうなるの?」といった類の問い合わせに対応する際には、とても便利でしょう。

個人的な趣味の問題として、輸出規制の問題については「米国の対イラン制裁」について記述があるものの、「安全保障輸出管理」や「米国再輸出規制」については記載がなかった点が残念です。が、あくまでこれは趣味の範囲の問題です。むしろ、安全保障輸出管理や米国再輸出規制については他の書籍でも勉強できますが、米国の対イラン制裁についてはあまり書籍も出回っていないので、これはこれで非常に有用だと思います。

以下、個人的に興味深かった質問をざっと列記しておきます。興味のある方は是非ご購入ください。

  • 第1章Q6:担当者名での発注
  • 第1章Q8:日付を遡る契約書の効力の始期
  • 第1章Q38:生産中止と供給責任の有無
  • 第2章Q16:調達先による原材料仕入先の無断変更
  • 第2章Q19:反社会的勢力であると思われる取引先との契約解除
  • 第3章Q1:瑕疵の意義
  • 第3章Q2:瑕疵の意義を定める必要性
  • 第3章Q26:中古で購入した製品の故障と製造物責任の有無
  • 第3章Q29:部品製造者の損害賠償責任の範囲
  • 第6章Q12:米国の対イラン制裁に関して契約上盛り込むべき条項
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