oneNDAの管轄条項について

雑記

少し前にTwitterで見かけた、oneNDAについてコメントしてみようと思います。

oneNDA

本取り組み自体の是非や契約条件の妥当性の是非については既に皆さま色々レビューされていますのでいったん脇に置いておき、今回は個人的に「すごく残念な点」一点につき記載します。

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問題提起:すごく残念な点

第7条 (管轄)

本ポリシーに関する紛争については東京地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。

どうして東京地裁なのでしょうか。本社が東京にある会社が多いということは重々承知していますが、これでは東京以外の企業にとって一方的に不利益でしょう。

「よりフェアな社会を作っていく上でも、民法のように内容が公開されていて、そこにみんなが賛同していくやり方が最も受け入れられう可能性があると考えました。OneNDAには企業だけでなくフリーランスなど個人の方にも参加してもらえるようにしています」(早川氏)

NDAの統一化で迅速な取引実現へ、法律スタートアップが提唱する「OneNDA」始動

「フェアな社会」を目指すのであれば、裁判管轄については改善の余地ありと思います。

逆鱗に触れる

この問題、ずっと東京で仕事をしている人には感覚が分からないと思いますが、例えば関西に本社がある企業や地場の大企業では、強烈な嫌悪感を抱かれるところもあるのではないかと推測します。契約条件的に不利だという点もさることながら、「当然、東京でしょ」という態度そのものが、東京以外で事業を行っている会社の逆鱗に触れるものと推測します。このプロジェクトは多くの企業に参加してもらわないと成り立ちませんので、参加検討企業の感情を逆なでするような条項については改善の余地ありと思う次第です。

改善案1:被告の本店所在地を管轄にする

よくあるヤツです。ただ、今回の場合、コンソーシアム加盟の段階では具体的に誰が取引相手になるかわからないため、予見可能性がないという問題点があります。例えば本社所在地が北海道の会社さんがコンソーシアムに加盟後、ある会社と新規取引を開始しようとしたところ、相手方の本社が沖縄だったという場合ですね。oneNDAの管轄を被告の本店所在地にすると、こういう場合に大変だと思います。結構、ロシアンルーレット的な要素があります。

改善案2:全ての管轄パターンをあらかじめ決めておく

今、書きながら思いつきました。私、天才です。

<2020.8.27 23:30(UTC+8)追記>
下記につき、パターンは1128個ではないというご指摘を頂戴しました。追って確認し修正する予定です。
<2020.12.4 21:50(UTC+8)追記>
アドベントカレンダーの記事投稿前に、ようやく下記を修正しました。北海道は地方裁判所の管轄が4つに分かれているのですね。大変勉強になりました。
上記で「私、天才です。」と言っていますが、とんでもないアホですね。恥ずかしい。

数学の組み合わせの問題です。日本には47の都道府県があり、その中で2都道府県を選びます。計算式は47C2ですので、1081通りです。これに、原告と被告が同じ都道府県に存在する場合=47通りを足します。すると1081+47=1128通りです。(数学が苦手ですので、間違ってたらご容赦ください。)

数学の組み合わせの問題です。日本には47の都道府県があります。そのうち北海道は地方裁判所の管轄が4つに分かれているので、日本の地方裁判所の管轄の総数は47-1+4=50です。

地方裁判所は,全国に50か所あり,その管轄区域は北海道が四つに分かれているほか,各都府県と同じです。

裁判所 トップ > 裁判所について > 裁判所の組織 > 下級裁判所

その中で2つの管轄を選びます。計算式は50C2ですので、1225通りです。これに、原告と被告が同じ管轄区域に存在する場合=50通りを足します。すると1225+50=1275通りです。(数学が苦手ですので、間違ってたらご容赦ください。)

秘密保持ポリシーがちょっとだけ長くなってしまいますが、こんな感じにすればよいのです。

第7条 (管轄)
本ポリシーに関する紛争についての第一審の専属管轄裁判所は以下の各号のとおりとする。
(1)原告となる本コンソーシアム参加企業等(以下単に「原告」という。)の本店所在地または住所地(以下「本店所在地等」という。)が北海道であり、かつ、被告となる本コンソーシアム参加企業等(以下単に「被告」という。)の本店所在地等が北海道である場合:札幌地方裁判所
(2)原告の本店所在地等が北海道であり、かつ、被告の本店所在地等が青森県である場合:■■地方裁判所
(3)原告の本店所在地等が北海道であり、かつ、被告の本店所在地等が秋田県である場合:■■地方裁判所
<・・・たくさん省略>
(1128)原告の本店所在地等が沖縄県であり、かつ、被告の本店所在地等が沖縄県である場合:那覇地方裁判所
第7条 (管轄)
本ポリシーに関する紛争についての第一審の専属管轄裁判所は以下の各号のとおりとする。
(1)原告となる本コンソーシアム参加企業等(以下単に「原告」という。)の本店所在地または住所地(以下「本店所在地等」という。)が札幌地方裁判所の管轄区域内であり、かつ、被告となる本コンソーシアム参加企業等(以下単に「被告」という。)の本店所在地等が札幌地方裁判所の管轄区域内である場合:札幌地方裁判所
(2)原告の本店所在地等が札幌地方裁判所の管轄区域内であり、かつ、被告の本店所在地等が函館地方裁判所の管轄区域内である場合:■■地方裁判所
(3)原告の本店所在地等が札幌地方裁判所の管轄区域内であり、かつ、被告の本店所在地等が旭川地方裁判所の管轄区域内である場合:■■地方裁判所
(4)原告の本店所在地等が札幌地方裁判所の管轄区域内であり、かつ、被告の本店所在地等が釧路地方裁判所の管轄区域内である場合:■■地方裁判所
(5)原告の本店所在地等が札幌地方裁判所の管轄区域内であり、かつ、被告の本店所在地等が青森県である場合:■■地方裁判所
(6)原告の本店所在地等が札幌地方裁判所の管轄区域内であり、かつ、被告の本店所在地等が秋田県である場合:■■地方裁判所
<・・・たくさん省略>
(1275)原告の本店所在地等が沖縄県であり、かつ、被告の本店所在地等が沖縄県である場合:那覇地方裁判所

まぁ問題点は「長くなる」という点につきますね。1128号1275号もある契約書は見たことがありません。上記の条項案は極論ですが、本当にフェアな条件にしようとするのであれば、もうちょっと改善の余地があるのではと思った次第です。

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