輸出者等遵守基準と外為法等遵守事項の関係性についてまとめました。
どちらか一方が法的義務のあるもの、もう一方は経産省への輸出管理内部規程の届出の要件、ということは覚えているのですが、どちらがどちらだったか、いつも調べては忘れを繰り返していますので、この機会にまとめてみました。
1.結論
(1)輸出者等遵守基準
- 遵守は法的義務
- 根拠規定は外為法第55条の10第1項および遵守基準省令
- 遵守基準省令第1項第1号の基準は、業として輸出を行うもの全てが遵守すべきもの
- 遵守基準省令第1項第2号の基準は、リスト規制品の輸出等を行う者が遵守すべきもの
(2)外為法等遵守事項
- 遵守は任意、ただし輸出管理内部規程の届出の前提条件となっている
- 根拠規定は通達「輸出管理内部規程の届出等について」別紙1の外為法等遵守事項
- 輸出者等遵守基準より外為法等遵守事項の方が厳しい
2.根拠規定等のメモ
仕事柄、根拠規定の確認が大事になりますので、どこに何が書いてあるのかをメモしておきます。
結論だけ確認すればよい方にとっては、下記内容は不要だと思いますが、筆者自身のためのメモですのでご容赦ください。
(1)輸出者等遵守基準
ア.特定重要貨物等について
話の流れ上、輸出者等遵守基準そのものについて確認する前に、まず「特定重要貨物等」の定義を確認する。
特定重要貨物等は外為法第55条の10第3項に登場する。
外国為替及び外国貿易法第55条の10第3項
前項の「特定重要貨物等」とは、特定技術又は第四十八条第一項の特定の種類の貨物であつて、その特定国における提供若しくは特定国の非居住者への提供又はその同項の特定の地域を仕向地とする輸出が国際的な平和及び安全の維持を特に妨げることとなると認められるものとして経済産業省令で定めるものをいう。
外国為替及び外国貿易法 | e-Gov法令検索
ここでいう経済産業省令とは特定重要貨物等を定める省令をいう。
外国為替及び外国貿易法第五十五条の十第三項の特定重要貨物等は、外国為替令(昭和五十五年政令第二百六十号)別表の一から一五までの項の中欄に掲げる技術及び輸出貿易管理令(昭和二十四年政令第三百七十八号)別表第一の一から一五までの項の中欄に掲げる貨物とする。
特定重要貨物等を定める省令 | e-Gov法令検索
つまり、特定重要貨物等とは、リスト規制貨物およびリスト規制技術のことだ。
さっさと一言でそう言ってほしい。なんと勿体ぶった規定だろうか。
イ.輸出者等遵守基準について
話をもとに戻し、輸出者等遵守基準について確認する。
輸出者等遵守基準の根拠法令は外為法第55条の10第1項。
外国為替及び外国貿易法第55条の10第1項
経済産業大臣は、経済産業省令で、第二十五条第一項に規定する取引又は第四十八条第一項に規定する輸出(以下「輸出等」という。)を業として行う者(以下「輸出者等」という。)が輸出等を行うに当たつて遵守すべき基準(以下「輸出者等遵守基準」という。)を定めなければならない。
外国為替及び外国貿易法 | e-Gov法令検索
ここでいう経済産業省令とは輸出者等遵守基準を定める省令をいい、当該省令において輸出者等遵守基準が具体的に定められている。
輸出者等遵守基準は2段構えになっている。
- 輸出者等遵守基準を定める省令第1条第1号:業として輸出を行う者てが遵守すべき基準
- 輸出者等遵守基準を定める省令第1条第2号:リスト規制貨物の輸出またはリスト規制技術の提供(特定重要貨物等の輸出等)を行う輸出者が遵守すべき基準
最初に特定重要貨物等の定義を確認したのは、輸出者等遵守基準に特定重要貨物等が出てくるためだ。
ウ.輸出者等遵守基準の遵守は法的義務か否か
輸出者等遵守基準の遵守は法的義務である。
根拠規定は輸出者等遵守基準の根拠法令は外為法第55条の10第4項。
外国為替及び外国貿易法第55条の10第4項
輸出者等は、輸出者等遵守基準に従い、輸出等を行わなければならない。
外国為替及び外国貿易法 | e-Gov法令検索
(2)外為法等遵守事項
輸出者等遵守基準と異なり、外為法等遵守事項の根拠規定は通達「輸出管理内部規程の届出等について」である。
同通達の別紙1に外為法等遵守事項が定められている。
ア.輸出者等遵守基準と外為法等遵守事項の違い
- 監査、研修、文書保存:輸出者等遵守基準では努力義務だが、外為法等遵守事項では義務となる。
- 子会社等の指導:輸出者等遵守基準では(令和4年改正以降)努力義務だが、外為法等遵守事項では義務となる。
イ.外為法等遵守事項(輸出者等遵守基準においても定められている事項を除く)の遵守は法的義務か否か
外為法等遵守事項(輸出者等遵守基準においても定められている事項を除く)の遵守は法的義務ではない。
しかしながら、外為法等遵守事項の規定を満たした輸出管理内部規程を経産省に届けることで「輸出管理内部規程受理票」の交付を受けることができる。
そして 「輸出管理内部規程受理票」の交付を受けることは、包括許可(一般包括許可を除く)利用の前提条件となっている。
したがって、包括許可を利用する場合は、外為法等遵守事項の遵守が必須となる。
(3)まとめ
ア.経産省説明会のスライド
いろいろ確認したが、輸出者等遵守基準と外為法等遵守事項の関係性を一目で把握するには、経産省説明会の下記スライドが一番わかりやすい。
イ.条文の関係性を確認するためのメモ
最後に、条文の関係性まで含めて全体像を把握するため、自分用のメモとして下表を作成した。
法55条の10第3項:特定重要貨物等 | ━ | 特定重要貨物等を定める省令 | ━ | 特定重要貨物等=リスト規制品 | |
法55条の10第1項:輸出者等遵守基準 | ━ | 輸出者等遵守基準を定める省令 | ┳ | 第1項第1号:業として輸出を行うもの全てが対象 | 義務 |
┗ | 第1項第2号:リスト規制品の輸出等を行う者が対象 | 義務 | |||
通達「輸出管理内部規程の届出等について」 | ━ | (別紙1)外為法等遵守事項 | ━ | 監査、研修、文書保存、子会社の指導等が義務化 | 任意(ただし、包括許可利用の前提条件) |