本記事は2018年の秋から冬にかけて筆者が調べた情報をもとに、2020年の夏に執筆されています。最新の情報を反映できていない可能性がありますので、ご注意ください。
猫の輸出について、以前、法的根拠の説明に主眼を置いた投稿をしましたが、今回、「実際に猫を連れて行くには?」という実践的な観点から再度説明したいと思います。
なお、現在、新型コロナウイルスが世界的に蔓延しているため、これ以上に何か必要な手続があるかもしれませんが、筆者は新型コロナウイルスの流行前に渡台しているため、その時点での経験に基づく記述となりますこと、ご容赦ください。
また、自分で行っておいて何ですが、結構面倒くさかったので、渡台までに余裕のない方やペーパーワークが嫌いな方は業者さん等に依頼されてもよろしいかと思います。
以下、本題に入る前に手続の全体像のフロー図を掲載しておきます。この流れに沿って説明します。
1.台湾滞在先の住所、電話番号、台湾側の連絡人を用意する
猫を日本から台湾へ輸出する際に日本出国前に必要な手続として、大きく「日本の動物検疫所で行う輸出検疫」と「台湾当局への『輸入検疫同意書』申請」という2つの手続があります。
そのうち、台湾当局への輸入検疫同意書の申請時に、「①台湾滞在先の住所」「②台湾での電話番号」「③台湾側で何かあった時に連絡窓口となってくれる連絡人物」の3項目を入力する必要があります。
これらは申請前に短期間で用意できるものではありませんので、まず、これらを用意しましょう。すぐに用意できなくても問題ありませんが、台湾当局への申請までには必要になりますので、2.以降の手続と並行して準備を進めましょう。
なお、私の場合、輸入検疫同意書は私宛にではなく「③台湾側で何かあった時に連絡窓口となってくれる連絡人物」宛に送付されてきましたので、信頼できる方に連絡人物となってもらいましょう。
2.マイクロチップを埋め込む
まだ猫にマイクロチップを埋め込んでいない場合は、動物病院でマイクロチップを埋め込んでもらいましょう。
「ISO11784および11785の規格に準拠したマイクロチップ」を埋め込む必要がありますので、動物病院に予約する際、この点を確認しておくと安心です。
ちなみに私の場合、過去にマイクロチップの埋め込みを行っていましたので、今回はこの手続を省略することができました。 マイクロチップの埋め込みを行った後、動物病院で「動物個体識別番号(マイクロチップ・動物ID)登録申請書」という書類を記入するよう説明があると思いますので、動物病院の指示に従って申請書を記載しましょう。記載後は、動物病院から日本獣医師会に申請手続を行ってもらいます。登録完了後、日本獣医師会から「マイクロチップデータ登録完了通知書」という名のハガキが届きます。このハガキは日本出国前の動物検疫の際に動物検疫所に提出する必要がありますので、大切に保管しておきましょう。(以下、本記事ではこのハガキを「①:マイクロチップデータ登録完了通知書」といいます。)
3.狂犬病の予防接種(1回目)
狂犬病の予防接種を行います。上記2.でマイクロチップの埋め込みを行う場合、「マイクロチップの埋め込み」→「狂犬病の予防接種」の順番であれば、これらを同日に行ってもよいとされています。「先にマイクロチップの埋め込み」「後から予防接種」の順番で行うよう、動物病院に確認しましょう。
なお、接種する狂犬病ワクチンは「不活性化ワクチン」という種類のワクチンである必要があります。この点も、予防接種前に動物病院に確認しておきましょう。 そして予防接種後に、動物病院から予防接種の証明書を発行してもらいましょう。特に様式はないので、動物病院の任意のフォーマットで大丈夫です。この証明書は日本出国前の動物検疫の際に動物検疫所に提出する必要がありますので、大切に保管しておきましょう。(以下、本記事では1回目の狂犬病予防接種の証明書を「②:1回目の予防接種証明書」といいます。)
4.狂犬病の予防接種(2回目)
猫を台湾に連れ出した後、台湾から再び猫を日本に入国させる場合、「待機期間」が必要となります。すぐに日本へ連れ戻すことはできません。しかし、渡航前に狂犬病の予防接種を2回行っておくなどの手続を実施していれば、すぐに連れ戻すことが可能です。私の場合は台湾渡航までに時間的余裕がありましたので、2回目の予防接種を行っておくことにしました。
2回目の予防接種を行ったうえで台湾へ渡航した場合であっても、滞在期間の長さに応じて定期的に追加の予防接種を行い、狂犬病の抗体検査を行わなければ、「待機期間」が必要となる場合があります。必ず下記のウェブサイトを参照し、詳細をご確認くださいますようお願いします。
https://www.maff.go.jp/aqs/animal/dog/shortstay.html
2回目の狂犬病予防接種は、1回目の予防接種から30日以上、1年以内に行う必要があります。この間に約1か月の時間が必要になりますので、渡航までにあまり時間的な余裕がない方はご注意ください。 予防接種後、前回と同様に、動物病院から予防接種証明書をもらいましょう。この証明書も日本出国前の動物検疫の際に動物検疫所に提出する必要がありますので、大切に保管しておきましょう。(以下、本記事では2回目の狂犬病予防接種の証明書を「③:2回目の予防接種証明書」といいます。)
5.英文の予防接種証明書
台湾当局へ輸入検疫同意書の申請を行う際、英語で記載された予防接種証明書が必要になります。(台湾当局に提出するので、日本語の予防接種証明書は使えません。)この予防接種証明書には次の項目が記載されている必要があります。
- 猫の品種
- 猫の性別
- 猫の年齢
- 猫のマイクロチップ識別番号
- 猫に狂犬病ワクチン(不活性化ワクチンに限る)の予防接種を受けさせたこと
- 狂犬病ワクチンの種類
- 狂犬病ワクチンの予防接種日
- 予防接種日が猫の輸入日の30日前から1年以内の期間内であること
- 予防接種日において、猫は生後91日以上であること
そして、予防接種証明書のフォーマットは任意とされていますので、上記の項目を満たした予防接種証明書のフォーマットを申請者が自分で作成する必要があります。
本ブログでは、英文の予防接種証明書のフォーマットのサンプルを下記ページで紹介しています。
予防接種証明書のフォーマットを作成した後は、必要項目を記載します。手元に「①:マイクロチップデータ登録完了通知書」「②:1回目の予防接種証明書」「③:2回目の予防接種証明書」がありますので、マイクロチップ識別番号や予防接種日等についてはこれらの証明書の記載内容のとおりに書き写しましょう。
英語の予防接種証明書に必要項目の記載が終わったら、その予防接種証明書を動物病院に持っていき、獣医師さんにサインをしてもらいましょう。獣医師さんのサインが無いと台湾当局に受理されません。予防接種を行う際、あらかじめ「後から、英語版の予防接種証明書にもサインをお願いします。証明書は後日作成して持ってきます。」と伝えておくと安心です。(以下、本記事ではこの予防接種証明書を「④:英文の予防接種証明書」といいます。)
6.輸入検疫同意書の申請
ここまで準備ができたら、台湾当局に輸入検疫同意書の申請を行います。申請を行う前に、下記ウェブサイトを確認しておきましょう。大事なことがたくさん書いてあります。
確認が終わったところで、申請手続に進みましょう。申請は下記ウェブサイトから行います。
当然中国語ですので、右上の「English」をクリックして英語表示に切り替えましょう。
画面上に「New Application」という項目があるハズですので、その部分をクリックしましょう。
もし「New Application」が表示されない場合は、「more…」という部分をクリックしてみてください。この「more…」をクリックすることで、画面左上に「New Application」が表示されるハズです。
クリック後は必要項目を入力していきましょう。下の方に「#1 Upload the rabies vaccination certificate」という項目があるので、「④:英文の予防接種証明書」のPDFファイルをアップロードしましょう。
私の場合、申請からちょうど10日で輸入検疫同意書を取得することができました。(以下、本記事ではこの同意書を「⑤:輸入検疫同意書」といいます。)
7.狂犬病の抗体価検査
輸入検疫同意書の申請と並行して、狂犬病の抗体価検査を行います。
2回目の予防接種の後、猫から採血を行い、狂犬病の抗体価検査を行う必要があります。私の場合、獣医師さんから「予防接種の日から数日間隔をあけた方が、よい検査結果が出ます。」と助言をいただきましたので、2回目の予防接種から約2週間の期間を空けて採血を行いました。
採血後、動物病院で「狂犬病抗体検査証明書(兼申込書)」という用紙に必要事項を記載し、動物病院経由で検査機関に検査を依頼します。
8.輸出検査申請書の作成
狂犬病の抗体価検査と並行して、輸出検査申請書を作成しましょう。まず、下記のウェブサイトから「輸出検査申請書」をダウンロードし、必要事項を記入します。
記入例も掲載されているので、それに従って記載しましょう。記入例では、マイクロチップ識別番号や狂犬病予防接種の情報について「ペットの場合は記載しなくても可」とありますが、「①:マイクロチップデータ登録完了通知書」「②:1回目の予防接種証明書」「③:2回目の予防接種証明書」の記載内容のとおりに漏れなく記載しておきましょう。この段階では狂犬病抗体検査の「抗体価」の欄はまだ記載できませんので、ここは空欄にしておきましょう。(以下、本記事ではこの申請書を「⑥:輸出検査申請書」といいます。)
9.動物検疫所による申請書類の事前確認
次に、動物検疫所へ申請書類の事前確認を依頼しましょう。動物検疫所の連絡窓口は下記ウェブサイトから確認できます。
動物検疫所の連絡窓口に対して、これまで準備してきた次の書類をメールで送付し、これで問題ないかどうか確認してもらいます。
- 「①:マイクロチップデータ登録完了通知書」
- 「②:1回目の予防接種証明書」
- 「③:2回目の予防接種証明書」
- 「⑤:輸入検疫同意書」
- 「⑥:輸出検査申請書」
このとき、「現在、狂犬病抗体検査の実施中のため、抗体価は空欄としています。検査結果を受領次第、輸出検査申請書に追記する予定です。」と申し添えておきましょう。
また、この一連のやり取りの中で、実際に動物検疫所へ猫を持ち込んで検疫を行う日程を予約しておきましょう。
10.抗体検査証明書の受領
やがて、抗体検査の採血時に動物病院で作成した「狂犬病抗体検査証明書(兼申込書)」に抗体価が記載されたものが検査機関から郵送されてきます。これが抗体検査証明書になりますので、失くさないようにしましょう。(以下、本記事ではこの証明書を「⑦:抗体検査証明書」といいます。)
抗体価は「0.5IU/ml以上」である必要がありますので、検査結果を確認しましょう。問題なければ、「⑥:輸出検査申請書」で空欄にしていた「抗体価」の部分に、検査結果の数値を追記しておきましょう。
11.動物検疫所での輸出検疫
いよいよ日本出国です。出国前に動物検疫所で動物検疫を受けます。「9.動物検疫所による申請書類の事前確認」で述べたとおり、必ず、検疫の日時については事前に動物検疫所と調整しておきましょう。
輸出検疫の際に提出する書類は次のとおりです。
- 「①:マイクロチップデータ登録完了通知書」
- 「②:1回目の予防接種証明書」
- 「③:2回目の予防接種証明書」
- 「⑤:輸入検疫同意書」
- 「⑥:輸出検査申請書」
- 「⑦:抗体検査証明書」
また、輸出検疫では使用しませんが、念のため次の書類も持っていきましょう。
- 「④:英文の予防接種証明書」
そして、輸出検疫の際、窓口で「『猫が輸出前の180日間または出生後一貫して日本で飼育されている旨』と『輸入検疫同意書の輸入許可番号』を輸出検疫証明書に記載してください!」とお願いしましょう。
書類の確認と猫の健康状態の確認が終わった後、「狂犬病予防法に基づく動物の輸出検疫証明書」という書類が交付されます。この書類は非常に重要な書類ですので、絶対に失くさないようにしましょう。(以下、本記事ではこの証明書を「⑧:輸出検疫証明書」といいます。)
12.搭乗手続
輸出検疫が終わったら、キャリーケースと猫を預けて飛行機に乗りますが、今までの手続で使った書類はとても大事ですので、キャリーケースに入れずに手荷物の方に入れ、財布等の貴重品と一緒に厳重に管理しましょう。繰り返しになりますが、特に「⑧:輸出検疫証明書」は絶対に紛失してはいけません。キャリーケースを預ける前に、次の書類が全て手荷物のカバンに入っているかどうか、もう一回確認しましょう。
- 「①:マイクロチップデータ登録完了通知書」
- 「②:1回目の予防接種証明書」
- 「③:2回目の予防接種証明書」
- 「④:英文の予防接種証明書」
- 「⑤:輸入検疫同意書」
- 「⑥:輸出検査申請書」
- 「⑦:抗体検査証明書」
- 「⑧:輸出検疫証明書」
13.台湾到着後
飛行機を降りたら、まずは猫を探しましょう。
我が家の場合、猫は台湾の空港の輸入検疫のカウンターの前に運ばれていました。猫がどこにいるかわからない場合は、落ち着いて航空会社の方に聞きましょう。
猫を探しつつ、キャリーケースも回収しておきましょう。
14.輸入検疫
猫と再会したら、輸入検疫を受けましょう。空港の検疫窓口へ行き、次の書類を提出します。
- 「⑤:輸入検疫同意書」
- 「⑧:輸出検疫証明書」
- 税関申告書(搭乗中に客室乗務員さんからもらう、税関提出用の小さな書類)
輸入検疫が完了すると、ようやく、無事に猫と台湾で暮らすことができます。このとき、輸入検疫の窓口でもいくつか大事な書類をもらいますので、紛失しないよう確実に保管しておきましょう。
15.空港を出る前に
キャリーケースを忘れていませんか?無事に手続が終わった安堵感から、キャリーケースを忘れていませんか?海外到着後早々に落とし物をすると非常に疲れますので、ご注意ください。